特別講演 「政治とディベート――市民的資質の育成に向けて」

 ディベート甲子園の最終日には、特別講演が行われます。
 特別講演は、ディベート甲子園のUstreamサイトでも中継いたします。
 http://www.ustream.tv/channel/dkoshien2013 
 

日時tokubetukou...

 8月12日(月) 15:10~15:40
 

講師

 竹島 博之 先生 (東洋大学法学部准教授)
   1972年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士後期課程修了、
   京都大学大学院法学研究科研修員、福岡教育大学専任講師、
   福岡教育大学助教授(准教授)を経て現職。
   2010年から現在まで日本公民教育学会理事。
 

会場

 東洋大学白山キャンパス 5号館・円了ホール
 

概要

 現実の政治をよりよく改善しようとする場合、2つのアプローチが考えられます。一つは、問題のある政治制度や、期待される役割を十分に果たせていない政治の仕組みを変更し、それを効果的に機能する制度へと改めたり置き換えたりする、という方向性です。もう一つは、制度を使いこなせていない人間の方に着目し、教育や実践経験を通じて政治制度の担い手の能力や資質を向上させる、という方向性です。政治の改善には、この2つの視点が両方とも欠かせないはずです。にもかかわらず、これまでの政治学は、どちらかというと政治制度の教育や研究に偏り、市民の資質をいかに育成するかという課題は、十分に扱われてきませんでした。

 政治学を教育・研究している立場からすると、今回のディベート甲子園は、2つの点で大きな意義があると考えます。一つは、高校の部の課題が「日本は首相公選制を導入すべきである。是か非か」であり、政治制度に関する大切なテーマを掲げていることです。私たち日本国民が選挙の際に抱く大きな不満は、最も重要な国のトップを国民が直接選べないことです。日本は民主主義という点で不十分ではないか、もっと民意が政治に届くような仕組みにすべきだという主張は、検討に値する実践的な課題であると言えます。

 また、もう一つの重要な意義は、ディベートという手法です。現代政治理論という研究分野では、近年、「熟議民主主義」や「討議デモクラシー」といった理論が盛んに論じられ、一定のルールの中でじっくりと話し合うことを重視する民主主義論に注目が集まっております。民主主義というと「多数決」がイメージされがちですが、議決に至る前には、みんなでじっくりと話し合って様々な意見を取り入れ、できるだけ多くの人が支持できるような主張へと高めていくことが前提にされています。つまり、じっくりと話し合う熟議は、健全な民主主義には欠かせない要素なのです。

 また、近年の民主主義論に「ラディカル・デモクラシー」という考え方があります。これは、意見を激しく闘わせることを積極的に肯定し、それによってこれまで隠されてきた問題をあぶり出すことを目指す構想です。話し合いというと、一般的には参加者が「合意」に至ることがイメージされがちです。しかし目指すのは、合意ではなく新たな問題の発見であり、そのために意見をぶつけ合う闘技的議論を活用しようというわけです。

 このように、政治学の分野では、民主主義における議論の重要性に注目が集まっています。みなさんが熱心に取り組んでいるディベートは、これらの新しい民主主義の新たな可能性を切り開くことにつながります。そしてそれは、これまで後回しにされがちだった市民の育成という面から、日本政治の質を向上させることにも寄与することでしょう。